CIMの設計業務におけるASP活用について

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第57回 平成25年度 北海道開発局技術研究発表会
CIMの設計業務におけるASP活用について
―業務履行中の3Dモデルの確認方法と業務検査―
室蘭開発建設部 苫小牧道路事務所 計画課 ○橋本沙絵子 蛯澤  敦 中山 光広  
 CALS/ECによる電子納品がルール化され、これにより、更なる成果品の有効な利活用を推進する必要がある。CIM(Construction Information Modeling/Management)はこれらのCALS/ECの成果と課題から構築されてゆくべきと考え、CALS/ECの一環をなすASP(Application Service Provider)による情報共有システムとの融合による業務軽減とコスト縮減(高価な3次元CADの購入の回避)について報告する。

キーワード:CIM、ASP、3次元CAD、生産性向上

1 はじめに

(1)CIMとは

CIMイコール3次元モデルと捉えられがちであるが、CIMとは以下に示すようにもっと広義の言葉である。その核として3次元のモデルがあり、そこに必要な情報を付加することで、データの高度な利活用が発展的となり、事業の計画から実施、メンテナンスまで一貫した同一のモデルでの管理が実現する。結果として3Dモデルにより可視化されることで、計画や設計時のトライアルや検討、施工時の出来形・品質管理、維持管理段階でのメンテナ ンス記録管理が、コンピュータ上で従来手法より現実に近い形で(仮想現実的に)行うことが可能となる。

(2)CIMの目指すもの

 日本の国土すべて(無論、構造物を含む)をモデル化することが究極の目標となる。情報は集約すればするほど価値が上がり劇的な効率化をもたらすものであり、国土の情報のすべてがそこに集約され情報の集合体となる。
 現在のストック調査などが莫大な延べ労力を費やし進められており、モデル化が完成すれば国土すべての作業(箇所の抽出、補修の優先度と年度計画、費用の算出はもとより将来の老朽化の予測まで)もがこの中ですべて完了することが可能であろう。
 発注者の職場環境も劇的に変化する。3Dモデルより積算数量が算出されるが、そのデータを積算システムに転記するようなことは発展過渡期には生じるだろうが、近未来には積算システムもCIMの統合システムが吸収するだろう。これは一例であって、現存する全てのシステムはもとより、各人が個別にパーソナルコンピュータ(以下PCという)に持ち得た情報もCIMの全体システムに統合され、この中で全ての仕事を行うことになるのは突飛な予想ではない。
 工事受注者の現場においてはどうだろう。土工現場では日々の切土により進む計測データがリアルタイムにCIM全体システムのデータベースに送信蓄積され、日々の出来形・品質管理が詳細になされ、下請けへの出来高の確認と支払い額の決定、気象データとのリンクにより工程管理の補正がなされるぐらいは想像できる。

(3)CIMの現在状況

 2012年度に設計業務への試行が開始され、2013年度には建設コンサルタントは一斉に3次元設計に乗り出している。しかし、契約の扱い、現行のCAD製図基準に変わるもの、成果品の納入方法、3次元CADの標準仕様もない。このような状況下で、発注者と中小建設企業はあわてて高価な3次元CADを取りそろえる必要はなく、当分は趨勢を傍観し情報収集に努めることで良いと考える

2 CALS/ECとCIMの関連性

(1)道路工事完成図の延長線上にないCIM

 平成17年の工事完成図の要領を見開くと目次があり平面図、横断図の項目が列記されていた。ただし、項目のみで中身は無いのだが、将来的に横断図を立体的に連携させて土工量を算出するというCIM的構想は既に存在していた。しかし、このシステムを利用して効率的に行おうとする開発者の意図はあっても活用者には浸透しなかった。
 工事完成図は本来工事後の維持管理段階における道路管理図や次回工事の発注図として利用されるはずであり、北海道開発局における現状は、道路維持台帳図と情報ボックス台帳図が維持管理の命綱である。
 しかし、受注者がコストと労力をかけて作成した工事完成平面図がどのように活用されているか、ご存じであろうか。カーナビゲーションでの交差点走行レーン案内に利用されているに過ぎず、右折レーンなど区画線がわかる平面図さえあれば、それで事足りてしまうのである。
 道路工事完成図(完成平面図と完成縦断図)と道路施設基本データ(要領では工事施設帳票と呼ばれる)は、同一メディアにより電子納品されるが、それは相互に連動しているわけでは無い。平面図上のオブジェクトをクリックしても、補修履歴などの諸元データが見えることもない。維持管理の段階では、平面形状に付随した属性データ等の入力(点検結果、補修履歴等)、検索・集計(歩車道区分、材質、共用年月日、道路付帯施設等)などの操作が必要である。これらの作業は、CADソフトではなくGISソフトの方が適している。
 道路工事完成図等作成要領は、GISで活用するための地理空間情報をCADソフトで作成し、CADデータで納品するための要領となっている。本来であれば、GISソフトで作成すべきデータであるが、GISソフトよりもCADソフトの方が広く普及していることに配慮して、このような仕様としたことが推察される。残念ながら、この配慮が本来の目的の不明瞭化、問題の複雑化につながっているものと思われる。具体的には、GISデータであれば本来必要である属性データのみ入力すれば良く、レイヤ名を付与する必要はないが、CADデータで納品するためCAD製図基準に沿ったレイヤ名を付与することとなっていることが挙げられる。
 GISデータは、形状を2次元で表現する場合が多いが、形状を3次元で表現すると、CIMの概念に沿ったモデルとなると考えられる。道路工事完成図等作成要領は、将来的にはCIMの概念に沿った工事完成モデルデータを作成するための要領に発展することが望ましい。
 なお、「道路基盤WEBマッピングシステム」も一般的にはGISに分類されるシステムであり、将来的にCIMの概念に沿ったシステムとして連携活用されることが望ましい。
 河川分野では道路工事完成図の手法をベースに、堤体盛土や河川構造物の横断図に属性情報を付与し、隣接する横断を接続することで得られる立体モデルを作成する試みもある。SXF P21がベースであるため、従来のCALS/ECの延長上の発展と見て取れるが、GoogleEARTH上でその立体を視認できる程度の結果しか得られないため、その先は不透明である。

(2)CALS/ECの延長線上にあるようでないCIM

 現時点で運用中のCALS/ECの進化の先にCIMが位置していると考えている人は多いであろうが、例えば電子納品要領に従った設計成果であるCADデータを考えてみてほしい。PCとCADソフトを利用し、幾何要素を組み合わせ、いわゆる図面に仕上げるのであるが、そのルールを示したCAD製図基準は、印刷出力の体裁を最優先して策定されたルールであることは、その線種や線幅の規定などの基本的なことを見るだけで明らかである。つまり、ドラフタ・T定規・カラス口そして製図用紙が、PC・CADソフト・マウス・プロッタ・ロール紙、と作成手法を変えただけであり、CALS/ECの導入前後でも、最終成果図面としての体裁は同一である。後出にもあるが、図面に限らず、帳票類についても、CALS/ECの導入前後では変化せず、作成手法が手書きやワープロからPCとワープロソフトに変わっただけである。印刷の体裁が優先されている現状では、手書きやワープロでの最終成果と同一である。
 これらCALS/ECの性質を分析すると、電子納品では、作成手法を変えただけであるため、その成果品をCIMの概念に従って共有・利活用することは、現行ルールの改良・発展では不可能である。全てをPC(単体のPCだけではなくサーバやそれらを連携するネットワークを含む仮想空間)上で完結させるCIMとは別次元の視点であることは明らかであり、CIMはCALS/ECの延長ではない。前出の印刷の体裁の意識などは、ルールさえ決定していればソフトウェアで自動的に出力できるものであって、CIMの概念では全く不要のものである。

3 CALS/ECの課題

 CALS/ECでは、業務実施中、工事施工中に多様な問題点を抱えており、それらを軽減する方策を考えることを独自の目標として受発注者(苫小牧道路事務所、(株)ドーコン中央コンサルタンツ(株)、ASPおよびCADベンダー)が協力し、下記の問題点に注目し取り組んだ。

(1)施工段階での作業軽減を示さないCAD製図基準


 図-1 CAD製図基準(案)による命名規則
 
 設計図の命名規則には、改定履歴が明確になるようになっており当初の発注図は0、改定のたびに1〜9、それ以上は、A〜Yを順に用い、最終成果品はZとなるはずであるが、そのような命名方法が適切に行われ最終成果“Z”が記載されているとは到底思えないわけであり、受発注者間のファイルの受け渡し形式も非効率なことが常態化している(図-1)。

(2)施工中段階での技術者の作業軽減を指し示してくれないCALS/EC

 CALSの制度と考え方が実践されるようになって久しいが、CALSの3大テーマ(情報の電子化、ネットワークの活用、情報の共有)のうち、ネットワークの活用のみが当たり前に為されている。しかし、情報の電子化は受発注者共に“PCは使っている”としても、同時に手元にプリンタがないと仕事にならない。また、情報の共有は工事施工中においてはASPによる情報共有サービス(以下ASPという)を効果的に使うことでごく限られた範疇で実現しているが、調査→設計→工事→維持のサイクルを総括することは無く、事業一連のサイクルで情報の共有がなされているとは言いがたい。
 また、CALSの3大テーマをベースに、すでに運用されている制度として、電子入札のみが効果的に成果を挙げている。応札する行為が応札者の端末で行われ、入札書が不要になったことにより手元にプリンタがなくとも応札可能であり、電子化が適切に実践されるに至った。かつ、入札結果は入札情報サービスにより過去も含めて公開され検索・閲覧が可能である。
 電子納品も紙媒体との二重納品や不正な発注図書貸与による受注者への押し付けなど、諸問題は抱えているが制度としては確立している。
 ASP活用を実践する上での課題は、これらの根本に根付く課題がほとんどであり、電子入札、電子納品のように、工事の始まりと終わりは適切にCALS/ECの概念が実践されているが、肝心の施工中の手続きやプロセスが電子入札に代表されるような手法で出来ていないことに端を発する。
 つまり、拘束された入口(入札)から入り、途中(施工中)は我流の非効率な行為を野放しにしておいて、確り出口(電子納品)は拘束である。これでは多くの土木技術者がCALS/ECと言えば嫌悪感を示し、仕事を増やしてくれる“悪”でしかないと思うのは仕方がない。

(3)3次元モデルの閲覧方法が最重要

 このように、入口と出口は決めたので完全に従え、ただし、途中は自分たちで工夫してなんとかしろと言う考えを繰り返されることに憤る。
 そこで、設計段階途中のCIMモデルデータを受発注者間で効率良く共有することを目的に、施工段階途中で活用されるASPとの組み合わせを試みることとし、最重要である3次元モデルの閲覧について言及することを目的とした。また、試行業務の過程をASPにて明瞭化し正確な記録を残すことも意図した。

4 業務におけるASP活用試行

(1)試行業務におけるCIM試行対象範囲の決定

 当事務所においては、下記の既設橋耐震補強設計業務をCIM対象業務として試行業務登録を行った。
a)一般国道235号むかわ町鵡川大橋耐震補強設計外一連業務/(株)ドーコンのうち「鵡川大橋」耐震設計のP2、P4橋脚をCIM対象とした。
b)一般国道235号日高町厚賀橋耐震補強設計外一連業務/中央コンサルタンツ(株)のうち「波恵橋」をCIM対象とした。

(2)第1回業務円滑化会議の実施(検査方法まで決定)

 検査時の書類提出方法を含め事前に書類の作成方法を明確にすることにより、無駄な書類作成を省き、業務を円滑に進めるための会議であり、下記事項の共有を図った。
a)打合せ簿類についてはASPでの電子決裁を必須とし、紙決裁は不可とする。
b)起案ルートは2系統あり、起案すべき案件一覧とその起案名のルールが決定されている。
c)検査の方法を決定する。ワークフロー(電子決裁)で処理した打合せ簿類は、WEB上でASPにログインし紙は不必要とする。ただし、3次元モデルの検査方法については最重要な検討事項として保留した。
d)書類のエコ化マニュアル(2010年9月浦河道路事務所安全協議連絡会にて発表)を理解する1)。 
e)会議終了後は、計画書に添付し確実に履行する。

(3)様式依存と印影にこだわることからの脱却

 従前の実務において、たとえば37号様式を伴う指示・報告・提出・承諾・協議といった手続きは、紙面あるいは印刷イメージでExcel等にて作成されたファイルの電子メールやUSBメモリ等の受渡しによる手法をとっていたが、この場合下記のような問題が生じていた。
a)ファイルを開かないと、記述内容が不明。
b)ファイルを開くと印刷イメージであるため、作成者は印刷の体裁にも配慮して作成しなければならない。
c)作成はPCでファイルとして作成されるが、提出、承認や受理といった手続きが、何によって担保されるのかが曖昧であり、結局印刷して押印になりかねない。
d)ファイルを開くと印刷イメージであるため、複数を対比したり一連の手続きの順を追って確認したりすることが困難である。
e)ファイル名の命名方法やフォルダ分けなど、意識した管理を自ら行う必要があり、かつ検索が可能な管理手法が必要であるが個々の資質や手法に依存する。
f)提出物一覧も自身で改めて作成する必要が生じる。
 つまり、従来手法は印刷イメージを扱うことが無意識に前提となっており、「ASP=単なる帳票作成システム」としか用いることが出来ず、検査の円滑な進行および、検査そのものの準備の省力化は期待できない。
 このようなことから第1回業務円滑化会議において、様式依存と印影にこだわることを払拭することを全出席者が共通に認識することが重要である。

(4)“37号様式”ではなく“37号手続き”

 まず、ASPを活用し始めるユーザの意識改革のために紙面を想像させる“37号様式”とは呼ばず、“37号手続き”と呼ぶことが印刷イメージ脱却への第一歩である。

論文の字数制限より省略した部分

f)提出物一覧も自身で改めて作成する必要が生じる。 つまり、従来手法は印刷イメージを扱うことが無意識に前提となっており、その弊害が作成時・管理時・検査時・納品時のあらゆる場面で現れる。結果、「電子的に扱う=プリンタを必要としないプロセス」を実現できない手法である。また、ASP上でこれらを扱ったとしても、単に印刷イメージで作成されたファイルを扱うような仕組みであっては、結局メールでExcel等のファイルを受け渡ししているのと何ら変わらない。作成支援機能や管理機能はASPの機能用件で定義されているため、この部分については期待できるが、検査時の閲覧手法が結局”印刷イメージの表示”であっては、検査時・閲覧時に効果的とは言えない。すなわち、「ASP=単なる帳票作成システム」としか用いることが出来ず、検査の円滑な進行および、検査そのものの準備の省力化は期待できない。
 このようなことから第1回業務円滑化会議において、様式依存と印影にこだわることを払拭することを全出席者が共通認識することが重要であり、受注者が受注業務の最終的な到着目標である業務検査の方法を当初に決定する意義は大きく、ASP活用を成功させるためには必須である。
(3)“37号様式”ではなく“37号手続き”
 従来の37号様式(紙面)の存在意義はその体裁から、誰が(受注者か発注者か)何を(何を提出するのか・何の承諾の依頼なのか・何を指示するのか・何について協議を求めるのか)いつ届け出たのか(起案日)いつ意思決定をしたのか(受理日)を管理し、その手続きが適切な時期に適切な処理がなされたことを担保すると共に、それら発生した一連の全ての手続きのインデックスの単票となる。このように作成した37号全てが揃うことでインデックスが完成する。つまり紙面での37号綴りがインデックスそのものとなる。
 ASPの電子決裁機能を用いる場合、業務計画書など、提出物自体は実体のあるファイルとなるが、そのファイルに”誰が””いつ””何を手続き開始し””誰が””いつ受理などの処理をしたかの情報”が付与された状態で管理される。その付与された情報を閲覧・管理できるのが電子決裁を行うASP上の画面そのものであるため、37号様式のファイルを印刷の体裁を含めて作成する必要が無い。つまり、利用者は、かつて37号の中に記載されていた”情報”の入力のみを行うことだけで、インデックスは自動生成するため、その内容が表示された画面が、かつて紙面の37号が果たした役割を担わせることができる。それは単純なテキストベースの情報であるため、出力時は欲しい体裁を任意に定義できる。特に手続きの多い工事では電子納品時に必要となる報告書管理ファイル(REPORT.xml)を簡単に取り出すことも可能である。(37号様式として印刷目的に出力することも可能)したがって、業務中に37号様式として印刷出力することは不要であり、情報の閲覧と検索が自在であることから検査用にも37号様式として出力する必要がなく、電子納品まで一貫して電子化されたまま取り扱うことが可能となる。
 ASPでこれらの機能を満足する前提で電子決裁を適切に実施することで、印刷イメージとしての”37号様式”の存在意義は薄まり、何をいつ提出したといった情報の入力行為のみにより、監督実務要覧上あるいは共通仕様書上の提出や報告といった手続きが完結する。このことから、入札制度のように業務改善された方法が可能となる。結果的に受発注者共に行うことは、37号様式を作るのではなく、37号で行っていた手続きをASP上で行うことに行き着く。
 まず、ASPを活用し始めるユーザの意識改革のために“37号様式“とは呼ばず、”37号手続き”と呼ぶことが印刷イメージ脱却への第一歩である。


5 業務実施中のASPの活用方法

 試行業務におけるASPの活用に際しては、第56回 平成24年度 北海道開発局技術研究発表会「ASPの実践活用による業務軽減とその効果について―ASP導入方法、施工中のASP活用方法及びASP工事検査方法―2)」を業務版に置き換え適用した。

(1)使用するASPの機能と工夫

a)ワークフロー(電子決裁)を完全実施した。
b)スケジューラはタスク管理が出来るようなものではなく機能不足であり積極的運用はしない。
c)各工事が契約するASPサイトとは別に発注者、受注者2社とポータルサイトを開設した。掲示板によりCIMに関すること、業務におけるASP活用の提案と議論を活発に行った(図-2)。


図-2 ASP掲示板上でのビューアに関する議論3)

d)業務においても現地踏査時の事故を想定しブログ機能を活用し緊急時5分以内のスピーディーな報告を行う訓練を行った。なお、ブログサイトの閲覧可能者は登録されたユーザのみである。
e)ポータルサイト内のブログには、次のような行動が迅速かつ積極的に投稿され、発注者側への可視化に効果がある。外業での着目すべき状況、社内研修による技術研鑽の様子、照査の状況など評価に直結するものが業務経過段階で確認できる(業務の場合は検査時においても見落とされがちになる)。


図-3 3次元CAD講習による技術研鑽状況のブログ記事4)

f)ポータルサイトのファイルキャビネット(共有のデータ保存場所)の活用により、一般的な様式類や統一運用や資料等多数が格納され活用される。
g)各工事サイトのファイルキャビネットには、通常の電子納品フォルダ以外に“REGULAR(必須)”の設置を義務付けた(図-4)。下位階層のサブフォルダのカテゴリ分を統一し定番的なデータの保存と緊急時の事故速報様式を格納している。このことにより緊急時に様式の探廻りを防止し、受注者が作成したものを調査員が修正し同位置に再格納することにより情報の齟齬は起きない。


図-4 “REGULAR(必須)”フォルダ4)

h)掲示板や通常メールの代用となる通知機能は、情報共有の基本として利活用される。よって、通常のメールは一切使用されなくなった。


6 発注者の閲覧方法(ビューア)の検討

  最重要視した閲覧方法について3方法を示す。

(1)市販の3Dモデル対応ソフトを購入する方法

 今回の試行業務では、受注者が使用したソフトとして3種類「Civil 3DRevit StructureNavisworks」をそれぞれ購入することが必要だが、パッケージ商品の方が安価である。パッケージ商品Autodesk Infrastructure Design Suite Premium 2014 の同梱ソフトは以下の通りである。(税込パッケージ価格997,500円)
a)AutoCAD Map 3D
b)InfraWorks
c)AutoCAD
d)AutoCAD Civil 3D
e)AutoCAD Utility Design、
f)Revit Structure
g)AutoCAD Raster Design、
h)ReCap、
i)Bridge Module 、
j)Geotechnical Module、
k)Rail Layout Module、
l)Navisworks Simulate
m)3Ds Max Design

 なお、受注者が使用しているPCスペックを参考に示す。
a)ノートPC本体:Note Galleria QF880、
b)CPU:Intel(R)Core i7-3840QM CPU 2.0GHz、
c)グラフィック:17.3インチ非光沢液晶(1920×1080) / NVIDIA GeForce GTX680M 4GB + インテル HD グラフィックス(Optimus 対応)、
d)メモリ:32.0GB、
e)システム:64bit、f)HDD:1TB、
g)SSD:256GB
 このようなハイスペックで高価な仕様が必要となる。
 今回の試行業務で受注者が活用したソフトは、Autodesk社の製品で固められ、これが必須かのように勘違いされるが、そうではない。国交省でのCADベンダーへの聞き取り調査によると、現行のCIM対応と言われるこれらのソフトウェアは汎用性の高さ(道路本体でも、橋梁でも、トンネルでも使える)に優れるという印象をうける(広く浅く)が、国産の各ベンダーも開発中であり、ごく近い将来、選択の幅が大きく広がることが期待できる。特に国産のCADベンダーは、情報化施工の対応を共通語として、3次元対応を順次進めており、各社自分の得意分野(道路土工・RC構造物・鋼橋など)、特定の分野に特化したものを開発中との報告を受けている。
 また、3Dモデルのみを作成する目的であれば、トリンブルスケッチアップのようにより安価で習得に労力を要せずに効果的に3次元モデルを作成できるものもある。
 要は、いずれかを否定するものでも肯定するものでもなく、場面場面で最適な道具を選択できるようになることは、歓迎されることである。

(2)一般公開されている無償ビューアを利用する方法

 Autodesk社のサイトから無償ビューアである Navisworks Freedom(ナビスワークス)が公開されている。回転等の視点の操作方法は、一般的に社会に普及している製品(3Dゲームやカーナビ等)と基本が酷似しておりマニュアルを熟読しなくとも直感的に操作は可能である。現在、発注者が使用する標準的なPC能力(プロセッサ:Intel Core i5-2400 CPU 3.10GHz、メモリ:4GB )において、ほぼストレスを感じずに閲覧することが可能であるが、下図のような複雑な配筋等を表示する場合PC能力の不足を感じる(図-5)。


図-5 3次元モデルによる既設鉄筋との取合い確認5)

(3)3Dモデルの閲覧機能があるASPを利用する方法

 ASPの一つであるCIM-LINK(伊藤忠テクノソリューションズ(株))は、3Dモデルの閲覧機能が標準装備されているため、別途ソフトをPCにインストールする必要が無く、ブラウザ上で直接3Dモデルを開くことが出来ることから組織内のセキュリティ上の手続きが生じない。閲覧時の表示に関するストレスは、通信速度に影響されるが、ナビスワークス同等かそれ以下である(Navisworks ActiveXをインストールすることにより、nwd形式をブラウザ上で直接表示することが可能)(図-6)。
 ただし、このCIM-LINKは、ASPの機能要件rev3.0を満足していないため、電子決裁(WF)等は運用できない。結果的に二つのASPを使い分けることとなる。


図-6  CIM-LINKによる橋梁全景6)

(4)現段階において発注者に必要なシステム(ソフト)

3次元モデルの作成、修正を行うためには、一般的な2次元CADを相応に使いこなせる技能を持つ者が、1週間程度の研修を受けなければ使いこなせない。つまり、3次元CADシステムを導入しても一般の発注者の技能レベルでは使いこなせない。
現段階において、3次元モデルの発注図書としての位置付けがないため、積極的にソフトを導入する必要がない。仮に導入したとしても、発注者の標準的なPCでは処理能力不足である。よって、無償ビューアや閲覧機能付きASPの利用をすることで十分である。 

7 受注者のプレゼン時の工夫

(1)打合せ時のディスプレイ等の活用

  打合せ時には、電子納品検査用のディスプレイ等を活用し、パソコンを操作しながら設計成果の説明・協議を実施した(図-7)。2次元CADは従来の紙図面を電子化したに過ぎないため、紙面による机上説明が成り立つが、3次元CADモデルを紙面上で説明するのは困難である。自由に視点を変え透過することにより全体から細部まで把握することが3次元モデル活用の長所でありディスプレイ上で直接表示することが必須である。また、他の資料もこのディスプレイを使用した説明が多くなり、紙面資料準備の労力が低減されペーパーレスにもつながった。
 打合せ後、打合せ簿とともに説明に使用された資料類がワークフローに起案されるが、長期的に明確な整理関連付けがなされる資料類のファイル命名ルールを定めた。

図-7 ディスプレイ等を活用した打ち合わせ状況

(2)CIM試行業務成果の検査の方法

  現時点においては、業務履行中であり検査は未実施である。方法としては、打ち合わせ時と同じく電子納品用のディスプレイにより受注者の説明を受けることとなる。

(3)インターネット接続回線の準備

  受注者が準備したLTE(高速通信サービス)等を利用し、WEB上(ASPへログイン)での説明を優先する。

(4)3次元データの納品方法

 3次元モデルのデータは、CAD製図基準等でその納品方法が規定されていないため、受・発注者間で協議しその納品方法を決定しているのが現状である。今後の本格運用に向けてその整備が急務である

8 CIMの発展にASPが寄与すべきこと

(1)ASPの有効性について

 今後、3次元CADデータを設計・施工段階を含めてやりとりする場合、情報の伝達方法として朱書き機能は重要となるが、それ以前に現行rev3.0の機能要件に3次元CADの閲覧機能が追加されなければならない。ASP上で直接開く軽快さに対し、データをダウンロードしビューアソフトで閲覧する手間の悪さは比較にならない。またその機能が無い場合、監督員のエゴからPDFへの変換による可視化を要求されることは容易に想像がつく。そのしわ寄せは発注者支援業務の担当者に向けられるであろう。
 2次元CADにおいては、SXFブラウザが国土交通省から公開されているが、それをインストールする以前にその存在を知らない発注者が多数である。インストール(内)しているはずとの仮定は、必ず裏切られると“仮定”するのが賢明である。ASP(外)にてその機能があれば解決する。データであろうとアプリケーションソフトであろうと“内から外へ”の流れに逆らう必要は無い。
 ASPの活用は、BCP対策(事業継続計画)といった高い付加価値もある。コンピュータの普及により、結果は紙面であっても、出所はコンピュータからの出力(印刷)であり、原本性はその出所であるデータが担うことが確実に多い。その保存方法も変遷してきた。記録媒体が主力の時代(紙パンチ→磁気媒体→光学媒体)から、ネットワーク技術の進歩により、クラウド技術が普及しつつある。常時使用する端末や接続した記憶媒体、あるいは前出の記録媒体など、バックアップを取ることは可能であろう。しかし、それらが災害等で同時に喪失した場合、データの復旧も困難となり、早期の業務再開は見込めない。ASPは、これらの危機管理の確実性を合わせて担保する。その上でファイルの管理や組織間の意思決定手続き(電子決裁)が行われる。

(2)今後の ASP開発の方向性について

 今後、CIMの試行が拡大するとともに業務設計と工事施工の連携が重要であるとの認識が固まり、デザインビルド(設計施工一体型)のような発注形態が注目されるであろう。また、業務も工事も発注ロッドは大型化すると考えられる。
 どちらにしても3次元モデルを扱うことに長けた建設コンサルタントは施工段階に大きくかかわることになり、その職域に変化が生じる。従前の工事が発注者と受注者である建設企業の二者の関係であったものが、建設コンサルタントを含めた3者で工事を進めることになる。必ずしも建設コンサルタントの技術者は現場に常駐しないであろうから、情報のやり取り(例えば、工事受注者が計測した出来形測定値を建設コンサルタントが3次元CADにて作図をする)にASPは欠かせないものとなる。
 今後のCIMの普及を考えると、その核となるモデルを取り扱うために必要なこと、仕組みを実装することが急務であることは明らかである。
 ASPベンダーは、CALS/ECの延長上でしかないベンダー間の互換性の開発より、3次元モデル閲覧機能の提供、モデルに基づく解析機能などの提供、モデルの属性情報を活用した施工管理や維持管理への発展に注力すべきである。

9 おわりに

 CIMがCALS/ECの轍を踏まず、公共事業の生産性向上やコスト縮減と共に我々土木技術者に業務の簡素化と効率化をもたらすものであることを願う。

 参考文献、参考サイト

1) URADO http://urado.dousetsu.com/
2) 第56回 平成24年度 北海道開発局技術研究発表会「ASPの実践活用による業務軽減とその効果について」浦河道路事務所
3) (株)ドーコン、中央コンサルタンツ(株)共同運用basepageポータルサイト
4) 中央コンサルタンツ(株)運用 basepage
5) (株)ドーコン運用 basepage
6) (株)ドーコン運用 CIM-LINK

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