COLAM-011 ASPの実践活用による業務軽減とその効果について

Daisuke SAITO,Kazuya SIOZAKI,Mitsuhiro NAKAYAMA
第56回 平成24年度 北海道開発局技術研究発表会
ASPの実践活用による業務軽減とその効果について
―ASP導入方法、施工中のASP活用方法及びASP工事検査方法―
室蘭開発建設部 浦河道路事務所 工務課 ○齋藤 大輔
塩ア 和也
中山 光広
CALS/ECの一環を成すASP(アプリケーション・サービス・プロバイダにより提供されるシステムの略称)が
道路部門受注工事に導入され早5年経過したが、実質的普及が進んでいないことから、
活用のメリットをユーザが享受できぬ状況にある。当事務所では道路維持除雪工事を核として、ASP導入方法、
施工中の活用方法及びASP工事検査方法を統一運用 しており、その手法概要とASPによる副次的効果を報告する。
キーワード:生産性向上、業務改善、情報共有、ASP

1 はじめに


(1) ASP活用の現状と監督業務の見直しを目的

 2007年度の道路部門工事発注でのASP利用開始(室建・函建・網建)から5年経つが、工事情報共有をASPというシステムや仕組みの利点を生かした活用がなされておらず、活用することで得られるべき効果や恩恵を受発注者ともに受けられていないのが実態である。
 そもそも、全国で同一の仕様である既製のASPシステムが、開発局事業や工事の監督業務、その他に則っているものなのかも含めて検証し、業務改善とその効果を得ることを目標に、ASPシステムおよび提供元ベンダへの要求(機能要求・ベンダの開発方針に言及)使い方のルール化(URADO STANDARDの構築)、従来からの監督実務の見直し(9号様式→電子的9号手続き・紙面での手続きをWEB手続き化)に言及することを目的とした。
 予めおことわりするが、当事務所の安全協議連絡会にて運用しているシステムは、川田テクノシステム株式会社の「ベースページ」であり、このシステムの活用からの報告である。しかし、異なるシステムにおいても参考となる工夫点は多数有ると考える。

(2) CALS/EC一環としてのASP活用

 ASP活用を論ずるにあたり現行の課題を掘り下げると、CALSの制度そのものの概念にまで遡る必要がある。
この制度と考え方が実践されるようになって久しいが、CALSの3大テーマ(情報の電子化、ネットワークの活用、情報の共有)のうち、ネットワークの活用のみが当たり前に為されている。しかし、情報の電子化は受発注者共に”PCは使っている”としても、同時に手元にプリンタがないと仕事にならない。また、情報の共有は施工中のASPを効果的に使うことでごく限られた範疇で実現しているが、調査→設計→工事→維持のサイクルを総括することは無く、事業一連のサイクルで情報の共有がなされているとは言いがたい。
 また、CALSの3大テーマをベースに、すでに運用されている制度として、電子入札のみが効果的に成果を挙げている。応札する行為が応札者の端末で行われ、入札書が不要になったことにより手元にプリンタがなくとも応札可能であり、情報の電子化が適切に実践されるに至った。かつ、入札結果は入札情報サービスにより結果は過去も含めて公開され検索・閲覧が可能である。電子納品も二重納品や不正な発注図書貸与による受注者への押し付けなど、諸問題は抱えているが制度としては確立している。
 ASP活用を実践する上での課題は、これらの根本に根付く課題がほとんどであり、電子入札、電子納品のように、工事の始まりと終わりは適切にCALS/ECの概念が実践されているが、肝心の施工中の手続きやプロセスが電子入札に代表されるような手法で出来ていないことに端を発する。
 また、事務所単位で課題を解決する手法を短期的に確立しても、発注者管理職の異動により簡単に白紙撤回される危険性があることも考えられる。
ASPを活用することで、最も効果的に成果を上げ易いのはペーパーレス化ではあるが、電子納品には直結していても、検査用に紙面が必要になる状況を回避しない限り、潜在的に印刷を求めることと成りうる。


2 工事受注から工事検査までの流れ

 当事務所では工事を受注後、直ちに第1回円滑化会議を実施し施工計画の作成方法エコ化マニュアルの説明、検査書類の作成方法IME土木用語の説明等の業務改善につながる複数の設定説明を行う。
 次に、社内検査にて精査された施工計画書を使用し、第2回円滑化会議として施工計画書の机上説明を行う。机上説明には、総括監督員や主任監督員、発注者支援業務まで出席し、説明を受注者より受けたのち工事着手する。
 工事の施工中は発注者支援業務の徹底的なサポートを行い、プロセスチェックでの書類の確認を行うことで二重納品にならないように進める。
 工事が完成に近づくとともに工事検査の準備に入る。事前に発注者支援業務の指導のもと、検査会場での機器の接続テスト及び工事検査のリハーサルを実施し臨む。

図−1 工事中から工事検査までのフロー


3 ASP導入


(1) 第1回円滑化会議の実施(検査方法まで決定)

 事前に書類の作成方法を明確にすることにより、無駄な書類作成を省き、工事を円滑に進めるための会議である。日々の書類作成についてや、工事検査時の書類提出方法についても打合せをし、受注者の書類作成に関する不安感を取り除くため工種に関係なく全工事実施する。
a)打合せ簿類についてはASPでの電子決裁を必須とし、紙決裁は不可とする。
b)起案ルートは、2系統あり重要度、工事評定及びその他利活用に合わせルートを設定する。また、起案すべき案件一覧とその起案名のルールを厳格に決定する。
c)始まってもいない工事検査の方法まで決定する。ワークフロー(電子決裁)で処理した打合せ簿類は、WEB上でASPにログインし紙は不必要とする。これは、”二重納品”を防止するためであり、紙にすると見た目にこだわるなど無駄な負担が生じるためである。工事写真は受注者で普段使用されている写真管理ソフトによる。これも紙は不要である。ただし、施工計画書等は無理に電子化せず、紙で用意する。
d) 書類のエコ化マニュアル(2010年9月浦河道路事務所安全協議連絡会にて発表)を理解する。
e)会議終了後は、施工計画書に添付し確実に履行する。

(2) 様式依存と印影にこだわることからの脱却

 従前の監督実務において、たとえば9号様式を伴う指示・報告・提出・承諾・協議といった手続きにおいては、紙面あるいは印刷イメージでExcel等にて作成されたファイルの電子メールによるやり取りやUSBメモリー等による受け渡しによる手法をとっていたが、この場合下記のような問題が生じていた。
a)ファイルを開かないと、記述内容が不明。
b)ファイルを開くと印刷イメージであるため、作成者は印刷の体裁にも配慮して作成しなければならない。
c)作成はPCでファイルとして作成されるが、提出、承認や受理といった手続きが、何によって担保されるのかが曖昧であり、結局印刷して押印になりかねない。
d)ファイルを開くと印刷イメージであるため、複数を対比したり一連の手続きを順を追って確認することが困難。
e)ファイル名の命名方法やフォルダ分けなど、意識した管理を自ら行う必要があり、かつ検索が可能な管理手法が必要であるが個々の資質や手法に依存する。
f)提出物一覧も自身で改めて作成する必要が生じる。つまり、従来手法は印刷イメージを扱うことが無意識に前提となっており、その弊害が作成時・管理時・検査時・納品時のあらゆる場面で現れる。結果、「電子的に扱う=プリンタを必要としないプロセス」を実現できない手法である。また、ASP上でこれらを扱ったとしても、単に印刷イメージで作成されたファイルを扱うような仕組みであっては、結局メールでExcel等のファイルを受け渡ししているのと何ら変わらない。作成支援機能や管理機能はASPの機能用件で定義されているため、この部分については期待できるが、検査時の閲覧手法が結局”印刷イメージの表示”であっては、検査時・閲覧時に効果的とは言えない。すなわち、「ASP=単なる帳票作成システム」としか用いることが出来ず、検査の円滑な進行および、検査そのものの準備の省力化は期待できない。
 このようなことから第1回円滑化会議において、様式依存と印影にこだわることを払拭することを全出席者が共通認識することが重要であり、受注者が受注工事の最終的な到着目標である工事検査の方法を当初に決定する意義は大きく、ASP活用を成功させるためには必須である。

(3)“9号様式”ではなく“9号手続き”

 従来の9号様式(紙面)の存在意義はその体裁から、誰が(受注者か発注者か)何を(何を提出するのか・何の承諾の依頼なのか・何を指示するのか・何について協議を求めるのか)いつ届け出たのか(起案日)いつ意思決定をしたのか(受理日)を管理し、その手続きが適切な時期に適切な処理がなされたことを担保すると共に、それら発生した一連の全ての手続きのインデックスの単票となる。このように作成した9号全てが揃うことでインデックスが完成する。つまり紙面での9号綴りがインデックスそのものとなる。
 ASPの電子決裁機能を用いる場合、施工計画書など、提出物自体は実体のあるファイルとなるが、そのファイルに”誰が””いつ””何を手続き開始し””誰が””いつ受理などの処理をしたかの情報”が付与された状態で管理される。その付与された情報を閲覧・管理できるのが電子決裁を行うASP上の画面そのものであるため、9号様式のファイルを印刷の体裁を含めて作成する必要が無い。つまり、利用者は、かつて9号の中に記載されていた”情報”の入力のみを行うことだけで、インデックスは自動生成するため、その内容が表示された画面が、かつて紙面の9号が果たした役割を担わせることができる。それは単純なテキストベースの情報であるため、出力時は欲しい体裁を任意に定義できる。電子納品時に必要となる打合せ簿管理ファイル(MEET.xml)を簡単に取り出すことも可能である。(9号様式として印刷目的に出力することも可能)したがって、施工中に9号様式として印刷出力することは不要であり、情報の閲覧と検索が自在であることから検査用にも9号様式として出力する必要がなく、電子納品まで一貫して電子化されたまま取り扱うことが可能となる。
 ASPでこれらの機能を満足する前提で電子決裁を適切に実施することで、印刷イメージとしての”9号様式”の存在意義は薄まり、何をいつ提出したといった情報の入力行為のみにより、監督実務要覧上あるいは共通仕様書上の提出や報告といった手続きが完結する。このことから、入札制度のように業務改善された方法が可能となる。結果的に受発注者共に行うことは、9号様式を作るのではなく、9号で行っていた手続きをASP上で行うことに行き着く。
 まず、ASPを活用し始めるユーザの意識改革のために“9号様式“とは呼ばず、”9号手続き”と呼ぶことが印刷イメージ脱却への第一歩である。


4 施工中のASP活用


(1) 使用するASPの機能と工夫

a)ワークフロー(電子決裁)は完全実施が必須である。
b)従来の週間工程表の作成を廃止し、ASPスケジューラーに予定や実施等の内容を記入する。
c)各工事が契約するASPサイトとは別に受注者、発注者、発注者支援業務をユーザとしたポータルサイト(総合サイト)を活用。
d)総合サイトのブログ機能を活用し緊急時5分以内のスピーディーな報告を行う。この操作は携帯でメールを送るのと同じ操作で簡単に誰にでも可能である。維持除雪工事においては、代理人から作業員まで全員が訓練を行い5分以内の報告を実現させている。なお、ブログサイトの閲覧可能者は登録されたユーザのみである。

図−2 維持除雪工事作業員によるブログアップ訓練

e)各工事ASPサイト内のブログは、日々の作業をアップすることにより詳細に作業内容を把握できる。特に維持除雪工事は、野帳代わりにその日の作業を記録し、メンバー全員が作業を把握 。内容をしっかり記入することにより、そのまま作業日報と確認写真として活用する。

図−3 維持除雪工事のブログによる作業報告

f)受注者の社内での決裁もASPで可能になるように、品質検査員や安全管理の担当者もメンバー登録する。これにより社内活動のリアルタイムな報告、現場管理、バックアップの見える化が可能である。社内決裁したものをそのまま監督員へワークフローで流すことから書類作成の手間も省力化できる。
g)総合サイトのファイルキャビネット(共有のデータ保存場所)の活用により、一般的な様式類統一運用の共有はもとより、維持台帳図マスターデータを格納し随時の更新作業から微細ながらコスト縮減が可能である。
また、受注者が共有を認めた各工事の社会貢献時の計画実施反省資料等多数が格納され活用される。
h)各工事サイトのファイルキャビネットには、通常の電子納品フォルダ以外に“REGULAR(必須)”の設置を義務付けた。下位階層のサブフォルダのカテゴリー分を統一し定番的なデータの保存と緊急時の事故速報様式を格納している。このことにより緊急時に様式の探廻りを防止し、受注者が作成したものを監督員が修正し同位置に再格納することにより情報の齟齬は起きない。

図−4 “REGULAR(必須)”フォルダ

i)掲示板や通常メールの代用となる通知機能は、情報共有の基本として利活用される。

(2) 維持除雪工事特有の煩雑な9号手続きを簡素化

 維持除雪工事では、突発的な指示案件(例えば外部から通報のあった落下物処理等)が多発するためASPでのワークフロー処理は不可能と思われてきた。そこで次のような工夫により運用する。
突発的な指示案件は、監督員からの電話によるものとしASPでは起案しない。受注者は処理済み報告をASPブログによりリアルタイムに実施し指示事項の履行確認を確実なものとしている。このような案件は、一週間毎にまとめて受注者が起案し、ひとつのワークフローで報告を行う。(指示は省略し報告のみ)なお、通常の指示事項は一般工事と同様のワークフロー処理を行う。

(3) 段階確認、立会の効率化

 段階確認検査を発注者支援業務が実施した場合、受注者は段階確認資料を毎回作成しているのが常であるが、検査をした発注者支援業務も、段階確認資料を毎回作成する。つまり二重に書類が作成されているが、土木工事書類作成マニュアル(平成21年12月 北海道開発局事業振興部工事管理課)によると受注者が作成する義務はないため受注者の作成を禁止した。

5 非効率と言える一般的な”電子検査”の方法


一般的に考えられている電子検査の方法は下記の2種類がある。

(1) 様式9号など全て印刷イメージで扱い、適切な”フォルダ分け”による整理されたもの、もしくは作
成された”電子納品成果”そのものを閲覧する検査方法

 電子納品成果作成支援ソフトウェア(市販されている有償のソフトウェア)のフォルダ分けは電子納品ルールではない。そのソフトウェア上での整理及び仕分け(ソフトにより異なる)が可能な、”図書管理機能”による閲覧方法で、”電子検査”としては最も多く行われている方法と考えられる。ローカルでの受験が可能であるが、情報そのものの取得は印刷イメージの表示になるため、検査の円滑な進行に寄与できない場合がある。検索の条件が書類名称のみしか行えない、あるいは”提出”に分類されるもの全てが検索されるといった抽出が困難なケースが有る。

(2) 電子納品成果そのものによる検査方法(DVDなどの納品メディア内のファイルを直接用いる方法)

 電子検査の実施要領ではこの手法を定めているが、実施されているケースは皆無である。インデックスとなる管理ファイルのxml が必ず生成していても、スタイルシートなしの場合、管理ファイル.xml をブラウザ上で視覚的に整理された記述で閲覧できない。(スタイルシートの生成に義務は無い)結果、管理ファイルの存在意義も無く、インデックスとしての役割を果たせていない。
 国交省電子納品チェックシステムによる閲覧機能を用いる手法もあるが、結局のところ、検索や一覧など検査時に必要なことが不十分。一覧もインデックスの情報が表示されるだけで、結局は帳票ファイルそのものを表示させなければ中身の確認は不可能である。すなわち、印刷イメージそのものを開かないと何もわからないでは、検査を円滑に進めることは出来ない。


6 ASPによる工事検査の方法


 前述したことから一般的に考えられている電子検査方法は検査や閲覧の円滑化の阻害要因を多く含んでおり、困難な方法である。そこで当事務所では、検査官の“見せて”の要求にスムーズに応え、検査の効率化を目指し試行錯誤を重ねた。

(1) WEB回線の準備

 使用するPCは、日頃から使い慣れている受注者のPCを使う。検査会場は当事務所とし、受注者が準備したLTE等(高速通信サービス)を利用する。なお、他の道路事務所においては発注者が準備したLAN回線及びPCによる検査を試みていると聞いている。

(2) 工事検査時の機器類の配置準備

a)ASP用PCと写真表示用PCが、最低でも2台必要である。ASPの操作は通常に文書を起案している現場代理人等が行い、写真は整理を担当した技術員等が行う。(不慣れな者が、操作を行うとスムーズに動作しないこと、画面の切替えが続くとストレスとなるため、必ずPC2台 モニター2台で行う。)
b)プロジェクターは部屋を暗くする必要があり、手元の書類も見えづらくなるため使用しない。ASP用PCには21型以上ワイド液晶画面、写真表示用PCには大型液晶画面(一般的な大型テレビ)を視認性良好から推奨する。
c)PCは故障など不足の事態に備えて2台ともWEBに接続し写真データも双方に保存する。
d)持参した書類のファイルは必要以上に机に出さず書類箱に入れ、施工計画書のみ机上に常備する。

(3) 書類一覧表で「電子」「紙」を区分し明瞭化

 「電子」「紙」の区分を明記するとともに、「受注者提出資料」「受注者手持ち資料」「発注者手持ち資料」の区分も明瞭化する。

(4) パワーポイントによる工事概要の説明

a)検査官の工事内容の把握は確実に検査効率化につながる。また、受注者のアピールポイントが明確となり主張の忘れが生じない。
b)所要時間は8〜12分以内とする。そして次の内容が各受注者の標準である。工事概要(品質証明員を写真付)、工事(事業)の目的、検査の範囲(特に中間検査時は重要)、作業の手順、工程・品質・出来形・写真・安全管理の工夫、社会貢献、イメージアップ、NETIS、技術提案の履行等である。

(5) ASPワークフローの準備と操作

a)検査官の基本的確認事項(施工計画書提出日の確認、段階検査、立会実施の確認等)は、予めワークフローにて絞り込み表示したものをブラウザのブックマークあるいは、複数タブとして用意する。検査官から質問された際は、ワンクリックのみで瞬時に表示可能である。
b) ワークフローの表示画面は、横スクロールが生じないように表示項目を事前に絞込むことが必須である。ワークフローの一覧表示により検査官の確認の多くが完了するため、特段の指示が無い限り自動生成される帳票は検査時間のロスとなるため表示しない。

(6) 工事写真の準備と操作

a)受注者の写真管理ソフトにて、検査官が確認したいものを直接表示する。多くの写真管理ソフトには、PDF生成による紙面作成を前提としたアルバム作成機能があるが、PDFによる写真確認は平成23年度の検査において大いに不評であったことから推奨していない。(写真のメタデータが確認できない。頻繁な画面スクロールは印象が悪い。そのため、写真帳を検査用にプリントアウトして用意する危険性がある。)
b)写真の整理担当者が直接操作を行う。また、施工中は検査時の直接表示を意識したフォルダ作成を行う。

(7) ワークフローとマッチングの良い書面様式の統一

 例えば、施工計画書は紙面で検査を受けるが、その変更履歴はワークフロー上で確認することになる。その際、紙面上の変更箇所(ページの追加や削除)が的確に説得力を持って確認可能な変更履歴様式ページ命名のルールを統一した。

(8) ノウハウの蓄積

工事検査時の質疑応答を記録し、工事検査時の反省点と有益な点を次回の工事検査に向けノウハウとして蓄積共有した。

(9) 検査の効率化

a)従前検査に比べると確認項目が多くなったが、ASPの場合、基本的な確認項目は短時間で可能である。
b)紙面の場合、質問に対し紙をめくり探し回答を得る。これの繰返しである。時には見つからず空白の時間が流れ受注者が冷や汗を流すこともしばしばであるが、ASPの場合、一覧表示されることから全体が把握でき、次に質問する内容を組み立てつつ双方向で対話が可能である。或いは、説明を受けなくとも確認が済む場合も多い。
c)打合せ簿など基本的な取纏め方法が統一されたため、個々の受注者の独自性に合わせる必要が無く楽である。
d)プレゼン能力の高い受注者は有利である。”見てもらう”という受け身な姿勢からレベルアップし、“見てもらいたい”という主体性を感じることが出来る。
e)ただし、これをなし得るためには前述した導入から施工中の活用、検査準備リハーサルを行うことが必要であり長期的なフォローアップが生じる難点がある。


7 ASP活用による副次的効果


(1) 検査書類の激減

 維持除雪工事においては、管理延長、履行期間、受注金額がほぼ一定であれば検査書類の重量もおおよそ一定であると想定できる。一般国道235号新冠町新冠道路維持除雪外一連工事を例に取ると、ASP導入前の平成21年度を100とすれば、平成23年度は45と激減している。
 なお、浦河道路事務所管内工事監督支援業務(土木技術・シビテック設計共同体)においては、業務成果品はDVDメディア1枚のみを実現している。

図−5 一般国道235号新冠町新冠道路維持除雪外一連工事における検査書類重量の変遷

(2) 技術的な向上

a)より充実した施工計画書の作成と適切な変更を行う効果が見られる。
b)事務所安全連絡協議会の活動が活性化し、CPDSの企画提案が頻繁に実施されNETISや環境家計簿への取り組みが顕著となった。
c)社内検査、安全管理、工程管理に受注者本支店のバックアップが活発となった。
d)CAD製図基準(案)を遵守し、SXF−P21形式の図面作成を心がけるように変化した。維持除雪工事の受注者においても土木CADを使いこなす技能が身についた。
e)受注者のパワーポイントやホームページ作成技能が高まり、プレゼンの能力が飛躍的に向上した。

(3) コミュニケーション、社会貢献及び環境意識の変化

a)ブログにより今まではあまりわからなかった災害の状況を受注者間(維持除雪工事)が写真で確認可能であることから、人員や資機材の準備をスムーズに行い災害の早期復旧に結びついた。
b)CO2削減を真剣に考えるようになりオペレーターに至るまで環境意識が向上した。
c)掲示板等で業務軽減の提案と議論されるようになった。
d)受注者相互の社会貢献を知ることにより、レベルの高い社会貢献が積極的に実施され、総括監督員以下が見落とし無く確認できる。また、受注者の事務所への来所回数は激減したが、受注者の努力を監督員が把握し理解することによりコミュニケーション不足を心配する必要は全く生じていない。

(4) 情報セキュリティ意識の向上

 当事務所へのUSBメモリーの持込みが無くなりセキュリティが向上した。また、受注各社において独自の情報セキュリティガイドラインを策定する動きなど組織的意識の変化が現れた。


8 おわりに


(1) ASP活用の課題を総括

a)従来の紙面ありきで制定されている基準類が足かせになっている可能性がある部分を洗い出す必要があること。
b)総括的に業務効率化を図るためには、多角的な業務改善が必要なのであって、ASPを用いることのみが、業務効率化の特効薬にはならないこと。
c)現状の仕事のプロセスはPCを用いて電子化する=印刷イメージを作ること、という実態を改善する必要があること。
d)確立した効果的な手法が定着し、適宜さらなる改良・改正がなされる制度であること。
e)施工中のASP活用そのものが、適切な検査準備そのものとなるための仕組みであるかどうかの検証が必要であること。すなわち、現在のASPは帳票作成を前提とした基本設計であり検査での利活用を考慮したシステム設計をしていないことから、各ユーザの工夫(当事務所も含めて)に頼らざるを得ない。これは、各ユーザの独自の運用が乱発し事後収集が付かなくなる危険性がある。
f)ASPの活用実態をコンプライアンス観点(なりすまし決裁等)から全道的に把握し厳しく指導すること。
g)ASPの活用に対する工事評価手法を確立すること。

(2) 浦河道路事務所では、下記の3点を業務軽減の基本理念として行動している。

a)受発注者双方(発注者支援業務を含む三者)が効率化。
b)多角的に効率化を追求する。
c)ブランド化し地元に定着させる。


 ASP活用は、これらを実現するための一手段にすぎず、ASP活用そのものが目的ではない。あくまでも業務軽減が目的である。
 ASPの活用は、ほぼ5年間にわたり空白の時を浪費したに等しい。CALS/ECが本来、公共事業の生産性向上やコスト縮減と共に我々土木技術者に業務の簡素化と効率化をもたらすものであることを願い、今後も当事務所は業務軽減に向け行動することをお約束したい。

参考文献
1) 浦河道路事務所管内工事監督支援業務土木技術・シビテック設計共同体:URADO電子検査マニュアル
2) (株)出口組:情報セキュリティガイドライン

http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/gijyutu/giken/h24giken/cs.htm
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